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札幌高等裁判所 昭和55年(く)12号 決定

抗告申立人(付審判請求人)

畠山馨

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告申立は、抗告申立人が昭和五五年六月一八日「通常抗告申立書」と題する書面を旭川地方裁判所に差し出して、これをしたものであり、右書面の記載によれば、抗告申立人が本件抗告申立においてその取消を求めている裁判、すなわち、原決定は、抗告申立人の請求にかかる被疑者前林勇、同中沢達夫、同川島正美、同三谷五郎、同道下晋、同伊藤秀王及び同宮井隆に対する付審判請求事件について、同年二月一九日旭川地方裁判所がした請求棄却決定(以下「本件原決定」という。)であるところ、記録によれば、本件抗告申立人は、同年三月二〇日本件原決定に対し、その取消を求めるため、本件抗告申立と同一の理由に基づく適法な抗告の申立をし(当裁判所昭和五五年(く)第三号)、この抗告申立について当裁判所が同年四月三日、この抗告は、理由がない旨の抗告棄却決定をし、右抗告棄却決定謄本が同月五日抗告申立人に送達されたが、右抗告棄却決定に対し何ら不服申立がなかつたにもかかわらず、本件抗告申立人は、同月二五日更に本件原決定に対し、その取消を求めるため、本件抗告申立と同一の理由(従つて、同年三月二〇日に行われた前記抗告申立と同一の理由)に基づく抗告の申立をし(当裁判所昭和五五年(く)第六号)、この抗告申立について当裁判所が同年五月二九日、この抗告申立は、不適法な申立である旨の抗告棄却決定をしたが、この抗告棄却決定の理由とするところは、一つの決定(ここでは、本件原決定)に対しいつたん適法な抗告の申立をした者が右決定(ここでは、本件原決定)に対して同一の理由に基づいて更に抗告を申し立てることは許されないというものであつたこと、並びに、右抗告棄却決定謄本は、同年六月二日抗告申立人に送達されたけれども、右抗告棄却決定に対し何ら不服申立がなかつたにもかかわらず、本件抗告申立人が同月一八日更に本件原決定に対しその取消を求めるため、同年三月二〇日及び同年四月二三日に行われた前記各抗告申立と同一の理由に基づく本件抗告申立に及んだものであることが明らかである。

以上の経緯にかんがみると、本件抗告申立は、抗告申立人自身これが不適法(同年五月二九日の前記抗告棄却決定記載の理由により不適法)な申立として排斥されるべきものであることを熟知していたにもかかわらず、本件原決定を受けたことと刑事訴訟法四二一条本文の規定とに藉口して行つたものであると推認され、従つて、本件抗告申立は、通常抗告の濫用に該当することが明らかであるから、刑事訴訟規則一条二項に違反する申立であり、既に、この点において不適法な申立といわなければならない。

よつて、刑事訴訟法四二六条一項前段により主文のとおり決定をする。

(山本卓 藤原昇治 雛形要松)

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